仙台高等裁判所 昭和26年(う)724号 判決
被告人が資金前渡官吏として配布された予算について部下と共謀の上、当該費途に支出する意思がないのに、虚偽の債権者を仮装して、内容虚偽の支出決議書を作成し、以て保管中の前叙予算中から引出し、当該費途以外の費目たる会議費、接待費等に支出したり、これを目的として別途に保管せしめていたことは所論の通りである。
しかし被告人の費消し、または費消せんとして保管していた本件金員は、自己の生活費その他の費用として自己の為に費消したことについては、これを認めるに足る証拠がないのであるから、右は結局被告人の弁解する如く、大河原税務署における税務行政の処理、運営の為の会議費又は接待費として支出したものと認めるの外ないのである。もつとも本件支出金の大部分は温泉旅館等における支出であり、しかもこれに関する支出明細書、領収証書等信憑するに足る資料は殆んど存在しないのであるから、会議費、接待費等の名の下に、被告人を初め所属職員の飲食費等に充当された部分も尠くないものと推測されるけれども、結局前述のように被告人は税務行政の処理の為正当の支払をなしたものであり、只その費用支出の経過に不法の点があつたに過ぎないのであるから、これを以て直ちに被告人に不法領得の意思があつたものと認める訳には行かないのである。して見れば右は財政法、会計法等に違反する職務上の義務違反または非行々為として国家公務員法に依る懲戒の対象となるは格別業務上横領罪に該当するものと認めることは出来ないのである。
(後略)